大根おろしの反乱

やどかりの貝殻

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はじまり

仕事終わりに立ち寄ったスーパーで、見切り品の大根が69円だった。
 
このところの価格高騰で久しく野菜を買っていない。
 
でも数年前までは、大根を使ったレシピをいくつかヘビロテしていたことを思い出す。
 
──夏だから、大根おろしにするのはどうだろう?
 
どうしてそう思ったのかは、わからない。
 
仕事で疲れていたのかもしれない。
 
 
・夏の大根は苦く、辛い
・私は苦いものも辛いものも得意ではない
 
 
そんな考えずともわかるようなことを、すっかり忘れていた。
 
検索するのも面倒で、代わりにチャットGPTに尋ねる。
 
「大根の見切り品69円ってどう思う?柔くはない」
 
「それ、買いです。」
 
長々と続く解説をざっと読んで、大根を片手にレジに向かう。
 
まさか、あんなことになるなんて夢にも思わず────
 
 
 
今回は、ゆるめの雑記回です。
 
大根とあまり親しくない方は何かの参考になるかもしれません。
 
お時間のある方は、ぜひお付き合いください。
 
 
 

大根の処遇

前述した通り、私は大根おろしが苦手です。
 
幼少期から今まで自作したことがありませんでした。
 
しかし、たこ焼きパーティーをした際に食べたおろしポン酢や、ひや麦か何かに乗っていた大根おろしが私の記憶を改ざんしていたようです。
 
家にある食材をチャットGPTに打ち込んで、提示されたレシピの中から“冷やしうどん”という案を採用。
 
このとき、私の脳裏には冷たくてさっぱりした“おろしぶっかけうどん”が浮かんでいました。
 
夏にピッタリで、のどごし爽やか。
 
しそやネギを常備していないのが惜しいところ。
 
だけど先日新しい白だしを買ったばかりということを思い出し、心の中で頷きます。
 
ここまでは完璧でした。
 
 
 

大根おろしのうどん和え

食事の支度を終えて、期待を胸をふくらませながらうどんを啜った──その瞬間、違和感に首を傾げます。
 
思っていた味と違うような……。
 
普段口にしない味に慣れていないだけかと思いつつ、咀嚼。
 
そして気の所為という可能性を信じてもう一度うどんを口に入れ、私は箸を置きました。
 

 
何よりもまず先に訪れていた苦味が、辛味とともに口全体に広がっていきます。
 
鼻に抜けるツンとした感覚は、少量であればきっと悪くないのでしょう。
 
だが、過ぎたるは及ばざるが如し。
 
爽やかどころか痺れるような刺激に襲われて、うどんの味はおろか食感すら曖昧になっていきます。
 
言うなれば、大根おろしの奇襲です。
 
チャットGPTが大根のおろし方のコツを延々と解説してくれるけれど、もうその段階ではありません。
 
AIの暴走を止める気力もなく、私は続けました。
 

 
このあたりから、返答に“薬味”という単語が見えて嫌な予感が頭をよぎります。
 

 
そう、私は茶碗1杯ほどの大根をすりおろしてうどんと和えていたのです。
 
うどんより大根おろしの方が多い状態。
 
大根おろしのうどん和え。
 
ちなみに勿体ない精神で、皮も厚く剥いてはいませんでした。
 
いや、包丁を手にしたときは厚く剥かなきゃと思ったはずなのに、なんかいける気がして薄く剥いたのです。
 
己に標準装備された節約習慣が憎い。
 

 
食材を無駄にしたくない一心で尋ねますが、質問が曖昧だった所為かチャットGPTは頓珍漢な答えを寄越します。
 
なので繰り返し尋ねると、
 

 
いや、ディスってる……?
 
 
 

まとめ∶大根おろしは薬味である

結局、鍋に戻して加熱することで美味しく食べることができました。
 

(褒められてる気がしない)

辛味成分のイソチオシアネートは加熱によって揮発するそうです。
 
鍋を覗いてるときに目や鼻がツンツンしたのは、揮発したイソチオシアネートを顔面で受け止めたからでしょう。
 
ともあれ、私の知っている大根の味にだいぶ近づきました。
 
ただ、つゆが水ベースではなく大根ベースだからでしょうか。
 
少し食べていると、調味料ではない素材の味の暴挙を感じました。
 
お出汁や塩分からはやって来そうにない、ガツンとした“濃さ”。
 
大根の存在感。
 
うどんは比較的少量でしたが、静かに押し寄せてくる大根たちのおかげで早々に満腹感を得られました。
 
いい加減な感想ですが、ダイエットとかに向いているのかもしれませんね。
 
やはり大根おろしは薬味として、適切な量を料理に添えるのが定石なのでしょう。
 
主食と戦わせるものではありません。
 
彼らの争いは終着点を得てもなお、人類に刺激という爪痕を残すのだから──。
 
 
 

おまけ∶大根おろしのあったかうどん〜寝るまで大根を感じる方法〜

材料
・うどん 140グラムくらい
・大根 5センチくらい
・ダイソーの白だし 大3
・水 適量
 
作り方
・大根をゆっくりすりおろす。
・うどんを茹で、水を切る。
・大根おろしとうどん、白だしを混ぜて沸騰しない程度に加熱。
・湯気に混ざる刺激が和らいだら火を止めて皿に移す。
 
注意点
大根の皮は厚めに剥くこと。
ジアスターゼという消化酵素は加熱により失われる可能性が高いです。

 

今回もお付き合いいただきありがとうございました。
 
ぜひ、また遊びに来てくれると嬉しいです。

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