ドリンクファイトの成れの果て

コラボカフェ

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はじめに

‘ドリンクファイト’というものをご存知でしょうか。
 
推し活民の現場のひとつ、コラボカフェでは、メニューの注文に応じてさまざまな特典を受け取ることができます。
 
 
🎁入店特典
入店時に渡されたり、テーブルに伏せて置いてあるもの。
ランチョンマットや大きめの紙類であることが多い。
 
🎁ドリンク・フード特典
ドリンクやフードを注文するともらえるもの。
フード特典は2枚もらえることもある。コースターやポストカードなどが多い。
 
🎁合計特典
飲食やグッズを購入した際に、合計金額に応じてもらえるもの。
例)1000円以上で1枚もらえる、1000円ごとに1枚もらえる、など。
前者はショッパー、後者はクリアカードやブロマイドなどが多い。
 
🎁その他の特典
フードとドリンクをセットで注文するともらえるもの、特定のメニューや高額なメニューを注文するともらえるものなど。
 
 
これらの特典で推しを引くために自分の限界に挑戦しながら飲食することをフードファイト、ドリンクファイトと呼びます。
 
フード特典とドリンク特典は同じものであることも多いため、私は自分の胃袋と財布の都合を考えてドリンクファイトに挑み続けていました。
 
その結果、どんな事態が待ち受けていたのか──しがないやどかりの体験談ですが、お付き合いいただけると幸いです。
 
 
初回、2記事目とだいぶ気合を入れて全力で書いてしまったので、今回は少しゆるめのライト回です。
 
「こんな人もいるんだなぁ」という感じで気軽に読んでくれると嬉しいです。
 
 
 
 

9杯目にしか推しがこない〜何のジレンマ〜

推しとコラボカフェに出会い1年が過ぎた頃。
 
待ちに待ったカフェでのコラボカフェが開催されました。
 
当時、ある程度融通の利く生活をしていた私は、倍率の高いカフェはほぼ全ての日程に申し込み、当選した日を有給にするという方法で当選率を上げていました。
 
更に、イベントの待機列で出会った人と仲良くなり、自分が当選したカフェに誘うなどして、自分も誘ってもらえるような関係を築いていました。
 
また同行募集にも積極的に声をかけることで合計7回ほど入店したのを覚えています。
 
最初の2回目までは推しが引けずともまだ余裕でいられました。
 
しかし3回目の入店でラストオーダーが近づいてきた頃──もしかして∶引けない?
 
そんな文字が脳裏に浮かびました。
 
そのとき、推しどころか推しと関わりの深いキャラクターすら1枚も引けていなかったのです。
 
そこで、私はなんとなく決めていた6杯〜7杯という制限を超えて9杯目を頼むことにしました。
 
ドリンクが到着する直前、正直なところお腹も財布も限界を超えているのでは?と感じました。
 
店員さんが私の注文したドリンクを持ってこちらに歩いてくる光景が今でも目に焼き付いています。
 
しかし、最後の1杯と同時に推しが来てくれたのです!
 
その瞬間、もう何もかもどうでもよくなって夢中で写真を撮影しました。
 
だけど、それからというもの……
 
4回目の入店でも、5回目の入店でも、推しが来たのは9杯目。
 
いっそ来なければ諦められるのに、飲めば来るのだから飲んでしまう。
 
「このコラボカフェを待っていたんだから」
「自引きするチャンスは今しかないんだから」
 
そう言い訳しながら飲み続けた結果、7回目の入店でも推しが来たのは9杯目でした。
 
 
 

命に関わるかもしれない

9杯目のジレンマに苛まれてからも、私のドリファイ生活は続きました。
 
推しが出ないあまりに他の開催店舗までハシゴをすることも少なくはなく、開催や特典が地方限定のときは遠征して1日に複数回入店するという──今思うととんでもないバイタリティで推し活に挑んでいたと思います。
 
そんなあるとき、いつものようにコラボカフェで散財し帰路についた私は駅のトイレで異変を感じました。
 
──歩けない……かもしれない。
 
飲みすぎたからちょっとトイレにと思ったはずなのに、個室のドアを閉めた途端に足が縺れます。
 
少しだけ体調が悪い気はしていたので、個室に辿り着いたことで気が抜けたのかもしれません。
 
とにかくその場で動けなくなり、気持ちが悪く、目の前がぼんやりと霞んでいました。
 
そのままどんどん気持ちが悪くなって吐いてしまうかと思ったけれど、しばらくすると、いつの間にか体が動くようになっていました。
 
時間帯が良かったからか、トイレに誰かいるような気配もありません。
 
私はきっと食べ過ぎてしまったのだと思い、帰宅しました。
 
このときはまだ、おなかに入れた量の問題だと考えていたのです。
 
 
それからは体調を崩すこともなかったため、私はまたドリファイの日々に戻ります。
 
余談ですが当時親しくさせていただいていたフォロワーさんの中には、私より大量に注文してあっという間に飲み切るタイプの方が多く、私の感覚はだいぶ上振れしていました。
 
その方たちは今も元気に飲み続けています。
 
話をもどしまして……
 
当時は仕事終わりにもコラボカフェに足を運んでいたため、多いときは週3回以上ドリンクファイトをしていました。
 
そして遂に、帰宅途中の電車内で以前とは比べ物にならない程の異変に襲われたのです。
 
 
 
──少しずつ空気が薄くなり、息が苦しくなっていく。
──手足に酸素が行き届いていないような感覚。触覚が鈍くなっていく。
──次第に両手の指が突っ張って自分では動かせなくなり、第一関節が内側に曲がる。
──荒い呼吸音が頭の中に響くけれど、息苦しさが増していく。
──考えがまとまらず、目の前が白く染まっていく。
 
──でもこれ終電だから今降りたら帰る手段なくなる!
 
 
 
もう倒れてしまうというときに降車駅に着き、荷物を腕で抱えてホームに転がり出ます。
 
立ち上がるどころか座ることもできず地面に這いつくばる私を、通行人が横目で見ながら避けていきました。
 
私は内心「命に関わるかもしれない」と思いながらも「パニックになったらダメだ」と自分に言い聞かせ、動けるようになるまでその場でじっとしていました。
 
幸い通行人が誰もいなくなる頃には何とか歩けるようになり、自販機で水を購入。
 
どういう状況かわからないけれど原因は十中八九ドリンクファイトだろうと思い、糖分を薄めるつもりで水を飲みました。
 
その後は一時間ほどですっかり回復。
 
さすがに少しセーブした方がいいのではと感じた私は、できるだけ生クリームが山盛りになっていないドリンクを選んだり、甘すぎるドリンクは水と交互に飲むなど多少気を使うようになりました。
 
 
しかし数ヶ月後──また同じことを繰り返しました。
 
このときはギリギリ病院が開いている時間だったので、そのままその足で受診しました。
 
結果、「異常なし」。
 
待っている間に症状が落ち着いてしまったのです。
 
ドリンクを大量摂取したと正直に伝えたのですが、医師は深刻には捉えていない様子でした。

今後控えるように指導されることもなく、どんなものでも飲みすぎには気をつけてくださいと言われただけでした。
 
対策や改善案はもらえませんでしたが、これらの症状がドリンクファイトによって引き起こされているのは明白です。
 
 
以来私は、
 
•コラボカフェに行く日の朝は野菜を食べるか野菜ジュースを飲む。(血糖値の急上昇を避けるため)
 
•コラボカフェの前に梅干しを食べる。(血糖値を下げる効果がある)
 
•甘すぎるドリンクは水と交互に飲む。(胃の中で薄める)
 
•ファイト時は糖分が少なそうなドリンクを選ぶ(推しのドリンクであれば最高なんだけど)
 
など、できるだけ食事に気を使いつつカフェを楽しんでいます。
 
また以前のように見境なく飲み続けることはなくなりました。
 
 
でも、みなさん思い出してください。
 
ドリンクファイトとはドリンクを飲むことが目的なのではなく、推しを獲得することが真の目的です。
 
もちろん推しを摂取すべく飲むこともありますが、多くの場合は特典のために戦うのです。
 
そしてそんな我々の事情を知るコラボカフェの中には、引換券を発行したり、テイクアウトを許可してくれるところも存在します。
 
次は、企業のありがたい歩み寄りと推しが引けないやどかりが生んだ悲劇をご紹介します。
 
 
 

狂気の推しゼリー

まずは予備知識から。
 
•引換券
コラボフードやコラボドリンクをその場で飲み切れない場合、後日引き換えることができる制度。
コラボ商品と引き換え可能な場合と、通常商品との引き換えになる場合がある。
GIGOのように最初から引換券のかたちで渡されることや、お1人様〇点以上のご注文は引換券対応とされていることもある。
 
•テイクアウト
そもそもテイクアウトで販売されている場合と、店内利用をした際にテイクアウトもできるタイプ、店内利用していなくても並べばテイクアウトが利用できるタイプなどがある。
 
 
その日、私は1日しか参加できないとあるカフェに参加しようとしていました。
 
幸い推しのドリンクは生クリーム山盛り系ではなく、ある程度ならたくさん飲むことができそうでした。
 
しかし、普段1種類のカフェで合計30杯前後は飲んでいるというのに、恐らく1日の限界と思われる10杯前後で満足できるでしょうか?
 
いや、満足できるはずがない。
 
10杯前後で推しが引けるはずがない。
 
だけど限界を超えて飲んでしまい倒れるなんてことになれば、今度こそ大ごとになってしまうかもしれません。

──飲めないなら食べればいいのでは……?

そう考えた私の手には、クリーム色の粉が握られていました。
 
 
 
結論から申し上げますと、40杯以上購入したのに推しは引けませんでした。
 
以前、60個以上購入したグッズで推しが出なかったことがあるので確率的にはないことではないのだと思いますが、金銭的にも精神的にも辛かったです。
 
軽く泣きそうになりながらも、私は無心でドリンクの氷を抜いて水筒に詰め替えます。
 
水筒に入り切らない分はコップのまま、持参したクリアファイルを使って2段に重ね、大きな袋に入れました。
 
そして引きちぎれそうな持ち手を掴み、帰路につきます。
 
事前に調べておいたので、帰りの電車はガラガラでした。
 
そうでなければ、大量のドリンクを抱えて乗り込んできた鬱々とした女から乗客の皆様が半歩後ずさったことだと思います。
 
そしてなんとか帰宅すると、私は持ち帰ったドリンクにクリーム色の粉──ゼラチンを投入しました。
 
間もなく冷蔵庫を埋め尽くす推し色の液体。
 
いつも調味料を照らすばかりの照明の光も、推し色に輝いて見えます。
 
虚無感と疲労感でくたくたになっていた私はその光景を見つめながら、「ここから推しが産まれないかな……」と呟いていました。
 
 
 
それから何日か悲しみで肌寒かったような記憶があるのですが、今思うと頻繁に冷蔵庫を開けては推し(液体→固体)を眺めていたからだと思います。
 
電気代高かっただろうなぁ。
 
眺めているばかりではなく、もちろん美味しくいただきました。
 
結果的に長く推しの概念を楽しむことができましたが、土日や人の多い時間帯にやると一般の方々の迷惑になってしまうので全く推奨いたしません。
 
ちなみに現地で交換していただいて推しの特典自体は何枚かお迎えすることができました。
 
ですが、引けなかった反動で後日フリマアプリで乱獲したので、最終的にこのカフェにいくら使ったかは考えたくもありません。
 
そしてこれまた余談ですが、なぜか炊飯釜を利用してゼリーを作っていた画像が画像フォルダに残っていました。

炊飯器で炊けば推しが生まれるとでも思ったのでしょうか。

まとめ

大変なこともたくさんありましたが、カフェで思い切りドリンクファイトに挑戦するのは楽しいです。
 
奇跡的にすんなり推しをお迎えできたとき、というのが私にはあまりないのですが、それでも推しを追いかけている時間は幸せです。
 
ですが楽しいくて夢中になってしまうことだからこそ、度が過ぎれば危険なこともあるし、おかしな落ち込み方をすることもあるよということをお伝えできたら幸いです。
 
 
 
今回はライト回だったのでふわっと流しているところもありました。
 
またの機会に色々と掘り下げていけたらなと思っています。
 
コラボカフェは本当に楽しい想い出もおかしな想い出もたくさんあるので、ぜひまたお付き合いいただけると嬉しいです。
 
 
 
今回もお読みいただきありがとうございました!

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